解雇された労働者が解雇手続の無効を争う場合、通常の訴訟手続を選択しますと1年程度かかる場合も少なくなく、その間労働者が賃金を得られないとなりますと生活そのものに行き詰まってしまいます。そのような場合、解雇した使用者に対し賃金の仮払いを強制する手続が賃金仮払いの仮処分です。
なお近年は、3回以内の期日で決着がつく労働審判という手続が創設されたため、あまり事実関係に争いがなく、和解が見込まれる事案については労働審判を申し立てるケースが増えているようです。
賃金仮払いの仮処分決定が出されるための要件として、保全の必要性、すなわち賃金を仮払いしてもらう必要性の立証が労働者の側で求められます。他方使用者の側からすれば、支払を免れるためには賃金を仮払いする必要などない、という事情を主張・立証する必要があります。具体的には労働者が資産を保有していた、近親者の収入で生活をしていた、正社員として雇用された、という場合であれば、仮払いを免れる余地があります。
他方短期のアルバイトで生計を立てているということや雇用保険を受領しているというだけでは、仮処分の必要性がないとまではいえず仮払いを免れることはできないケースが大半です。また解雇から申立までの間に期間がある場合には、その間なぜ申立をしなかったのか、生活に困っているなどと言うことはないのではないかと反論することも有効と思われます。
これら双方の主張を踏まえ裁判所から決定がされるに際しては、労働者及びその家族の生計を維持する上で、必要な限度の額に仮払金は限定される傾向があります。従って使用者としては、現実の生活費を主張し(労働者側から実際の出費額を裏付ける資料等の提出も求めるべきでしょう)、労働者の反論を待って更に再反論をするなどして、裁判所に具体的な生活費の限度に仮払金を出すように求めるべきです。
仮処分の申立がなされると、裁判所において審尋期日が指定され裁判所への出頭が求められます。審尋期日において、裁判所から和解を勧められる場合も多いので、本案訴訟を起こされた場合のメリットデメリットを検討した上で、和解に応じるかどうか判断すべきです。
賃金仮払いの仮処分を起こされた場合の対応も、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。